強化耐磁時計は実用的か?

今日、16日の時計は、強化耐磁16000A/mのシチズンプロマスターPMX56-2591。ムーブはGMT針付のCal.B876
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丸くてアラビア数字がかっこいい私が好きなデザインの時計です。

今日は、時計の大敵のうちのひとつ、磁力の話です。現代では、いたるところに磁場があります。私が毎日使うiPadも、スピーカー部分と、フタに使うための磁石が本体左側に内蔵されています。電車の中でも隣の人のスマホやカバンの金具が気になってしまいます。
機械式時計について言えば、ヒゲゼンマイが帯磁してしまうと振り方に異常がでて、精度に大きく影響します。2回ぐらい経験がありますが、やけに進む時計を消磁したら復活しました。ジャンクの機械式をやっているなかでは、リューズ周りのウラオサエが(大きい部品だからか)帯磁していることが多いように思います。

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時計メーカーは、職業的に強い磁場にさらされる人のために、ムーブを純鉄製の耐磁板で覆ったり、ヒゲゼンマイの性質を変えたりと努力してきました。ロレックスが1000ガウス(直流磁界80,000A/m)の磁力に耐えられるミルガウスを、IWC最高で500,000A/m(非公式で370万とか)のインジュニアを作ったのです。ところが、重いとかスケルトンにできないとか、デザイン上の限界がでてきますし、また、ヒゲゼンマイの材質が変わったことで温度変化で精度がわるくなったりしたようで、課題がありました。これらはあくまで特殊な時計という位置づけです。


また、面白いことに、オリエントが60年代にパラエマンというガワに特殊金属を用いた耐磁時計(およそ16000A/m)を作っていたのです。さすがオリエント!ちなみに50~60年代ぐらいの時計で文字盤にAntimagneticと書かれているのはヒゲゼンマイが(昔にくらべて)帯磁しにくい素材だという意味で、ガワが耐磁機能を持っているということではありません。


いっぽうで、クォーツでは、そもそも磁石の力が関わる機構なので磁石に近づけるといきなりブイーンと動いたりしますが、磁石から離せば、とりあえずちゃんとクォーツが等時性を維持できます。それでもやっぱり、磁場に近づけたくはありません。現在の「普通の」クォーツ時計では1,600A/m、JIS規格の耐磁1種では4,800A/mが一般的です。セイコーシチズンの普通の時計はこれらに当たります。強化耐磁としてJIS2種の16,000A/mの時計があります。最近では、機械式のGSで40,000A/m、80,000A/mという特殊なやつを出しています。
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今日の時計は、シチズンのちょっと前のプロマスター・ランドで、2種の16,000です。シチズンでは、プロマスターシリーズで一時期、Antimag16,000A/mという表記のJIS2種製品をいくつか出していました。

裏蓋は無く、ワンピースケースで、しかもベゼルがビス留め、GMT針まで付いて、アクティブなデザインです。もちろんエコドライブで、20気圧防水、チタンで傷のつきにくいデュラテクト加工にサファイア風防。ちょっと古い時計なので電波時計やパーペチュアルカレンダーではありません。大きさは40ミリ、リューズ入れて45ミリです。
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さて、問題は、こうした強化耐磁の時計ならまったく気にしないで、スマホやパソコンに密着させていいかと言えば、そうではありません。1,600 A/mのふつうの製品では磁気製品から10cm、JIS1種4,800 A/mでは5cm 、JIS2種の16,000 A/mでも 1cm 以上、遠ざける必要があります。密着させれば影響を受けます。

結局1cmでも、「意識して離す」必要がありますから、意味が無いと思います。磁石を意識して、10cm遠ざけるのも1cm遠ざけるのも面倒さで言えば同じだからです。
もちろん、予想外に磁石が接近した場合には9cmの違いも大きそうですが。
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セイコーシチズンも、一時期、JIS2種の時計が多かったけど、現行カタログではほとんどありません。セイコーの鉄道時計とGSぐらい。やっぱり中途半端で需要が無いんだろうと思います。せいぜいJIS1種で良かろうということじゃないかな。

一般の人にとっては、カバンの上に手を置いたり、パソコンのそばで作業をしたりするときに、全く気にしないでいいというストレスフリーな状態になれば、意義は大きいでしょう。それが、オメガのマスターコアクシャルで、「耐磁」というよりは素材を変えて「非帯磁」にするという試みでしょうか。15,000ガウスつまり、1,200,000A/m(非公式には80,000ガウスだとか)なんですって。これを一般化していくというのだからすごいかもしれない。

まあ、でも、結局、あんまり気にしないで大丈夫ですね。強化帯磁じゃなくていいです。気にしないで生きていきましょう。


今日は、こんなところで。読んでくれてありがとうございました。
おやすみなさい。