今日、11日の時計は、米軍A-11型ウォッチです。ブローバ手巻きのCal.10AK。
こんなブログ上でのことにすぎませんが、東日本大震災で亡くなられた人々とその遺族に対し、改めて深く哀悼の意を表します。また、いまだ様々な課題を抱える被災地の復興をお祈りいたします。
こういう日に酒を飲んだわけではありませんが、ちょっと帰りが遅くなりました。雨空で古時計は心配でしたが、どうにか降られずに済みました。鞄には時計をしまう袋とプロマスターを忍ばせていましたが。
我が家の震災対策の様子ですが、色々と不十分です。
さて、今日は、第二次世界大戦で使われた時計についてです。ロードマーベル36000にハック機能が付いていればな、という話をしたところですが、米軍の任務遂行に貢献したハックウォッチです。これをはめたアメリカ人が東京の空を飛んでいたかもしれません。
軍用の古時計の一つの魅力は、道具としての能力が最大限に引き出された時計であるということでしょうか。アクセサリーやステータスという腕時計の他の要素は一切なく、ただ、見やすく正確で壊れにくいということが追及されているのです。
よく、ロレックスとかグランドセイコーの視認性がすごくイイとか評価されます。針がどこを指しているかという点ではそのとおりかもしれませんが、読み取りやすさでは軍用が勝っているのだと思います。もちろん個人的に全アラビア数字が大好きだということもありますが、結局、黒文字盤にコントラストのいい白字のアラビア数字の全数字、というのが命を懸ける現場で採用されてきたということですから。
ただ、道具としての優れた性能を、古時計に求めるはずもありません。とくに防水性。そうであれば軍用をベースにした時計や機能重視の国産時計なんかを選ぶべきです。だから、道具としての能力が最大限引き出された中での、機能美であったりプロフェッショナリティを感じられるのが魅力なのです。
刻印によると、1943年製。少なくとも風防とリューズは交換されているように見えます。
それから、もちろん、軍用の古時計が人を引き付けるのは、特殊な環境で時を刻んできたという歴史を持っているためでしょう。古時計は、販売されたいきさつとか、どんな人がどんな思いで購入したのか、とか、その当時のことを想像することが大きな楽しみです。軍用に限っては、楽しいではすまない重い過去がありますが、同じように当時のことが想像されます。
戦争に関わった道具ということであれば、資料館に行けば残されたモノたちを見ることができ、そこにやはり何かが込められているような、訴えかけられているような気持ちになります。ただし、こと、機械式時計の場合、ゼンマイが巻かれて動きだすと、ある種、蘇ったような錯覚に陥りますから(これはジャンクが復活したときにいつも思うことです)、何か特別な遺物という感じがしてきます。
腕時計はもちろん任務遂行のための重要な道具のではありますが、「時間」と言うのはどんな人にも平等にどんな人生も同じように刻んでいたわけですから、兵隊さんは個人的な別の想いを持って視線を向けたこともあったでしょう。いま、この時間、銃後の家族はどんなことをしているのかな、とか、日常であれば今は会社に到着する時間だったなとか。
時計の紹介が遅れましたが、A-11型という軍用時計は当時、仕様を満たしたウォルサム、ブローバ、エルジンの3社が納品しました。94-27834というのは国の出した仕様書の番号ということです。
私が持っている、この時計はブローバ製でキャリバーは10AKです。
防水・防塵性をはじめ、文字盤にメーカー名を入れてはならないことや黒地に白字など、軍用ならではの時計です。戦時中なので、(ウラブタを除き)ガワはステンレスより質の悪い金属を使うよう定められていたらしいです。また、作戦前に時刻を合わせるために、ハック(秒針停止)機能があることが重要な条件でした。
この時計の場合、リューズを引くと、日の裏側から出ているピンが動いてテンワを止めるようになっています↓
チラネジのおかげて動きがわかりやすいです
思い当たる節がないのですが、作業中か作業後かにテンシンを折ってしまったようです。テンプ全体の交換となりました。
分解の様子は、そのうち。
デザインや針はメーカーごとに微妙に違うけど、ブローバは、レイルウェイ目盛があるのが特徴です。軍用であるかどうかは別として、シンプルなデザイン、アラビア全数字、31ミリという小ぶりのケースにリューズが大きいことなど、私にはグっと来る点が多い時計です。
文字板上には、9:12の針の跡が残っています↑
第二次大戦でアメリカで作られたこのA11ウォッチは、現在、今のところ平和なこの日本で、環境の違いに驚くこともなく、当時と同じ歯車たちが(少なくも一つ部品交換がありましたが)全く同じようにリズムを刻んでいます。
この歯車が今後も平和な時を刻み続けますように。
今日は、こんなところで。読んでくれてありがとうございました。
おやすみなさい。
ようやく企画の3分の1を通過しました。
疲れてきたので、応援クリックはとてもうれしいです。