その5 この時計の弱点、日付早送りについて
オリエントと言えば、銀座ライオンを思い出します。
この時計を大好きになり、今まさにオリエントの深みにはまる五秒前。
オリエントの時計は、つっこみどころが多い、笑えるとようなポイントがあるのが、今となっては魅力のひとつ、のようです。
たとえば、この時計は1000m防水のようなふれこみですが、あきらかに不可能です(これはオリエントに限りませんね)
ねじ込み式リューズでもありません。手巻きがリューズ二段引き位置というのもつっこみどころの一つかも。
そもそも、ダイバーと言う割に、視認性が悪いです。
この写真のように長針と短針の長さが似ていて、形も同じです。
そしてちゃんと実用する場合の、明らかな弱点は、日付早送り機構が無いこと。
当時、セイコーファイブやセブンのように、時刻だけでなく付加価値をつけるという意味で、日付、曜日付はセールスの上で重要だったようです。
また、デイデイトであれば、日付、曜日、ともに早送りできる方が便利ですが、少なくとも、日付だけでも早送りできるのが常識です。
オリエントの場合、デイデイトで二時位置のプッシャーを備える時計が多いです。
このプッシュボタンで日付を早送りができます。
曜日は、時刻合わせで24時付近を往復させるしかありませんので、デイデイトを合わせるには、このようにやるのだと思います。
①時刻合わせの状態で針をグルグル回して、24時付近を往復して、曜日を合わせる
②時刻を合わせる(夜中の時間帯を回避)
③プッシャーで正しい日付に合わせる
このキングダイバー、ベビーパネライのケースには2時位置プッシャーはありません。さすがに、穴は開けなかったんですね。
オリエントの日付早送りについて、トンボ本によれば、プッシャーではなく、一般的なリューズを引いた状態での早送りができるキャリバーは以下の通りです。他に有るのかもしれませんが。
AAA スイマー: 4930、4940、4950、4970
ハイエース:48740、48790
AAAデラックスの一部:4931、4941、4951、4971
つまり、このあたりのキャリバーを積んでおけば、問題なかったはずです。
しかるに
オリエントは、このガワに、プッシャー式のムーブを積んできたのです。
(もちろん、厚さとか径とか、色々都合はあるんだと思います)
この個体はCal.4971が入っています。
ネットを調べると、Cal.4973とCal.4971の二つが確認できました。
現在、SRで出ているモノには「Cal.42950 23J」という刻印のローターが入っていますが、どうなんでしょうね。ローターだけ違うのかな。そもそも、オリエントのキャリバーの法則ってわかりにくいからなぁ。針が違うのも気になる。
組立のとき、ムーブメントで、このプッシャーをいじってみましたが、しっかり機能しました(下の写真の黄色矢印)。もちろん、わざわざこの部分を取り去って売る方が面倒だったでしょうから、残っているわけですね。
しかし、この時計についてはプッシャーが無いのです。リューズも、
通常が空回り
一段引きが時刻合わせ
二段引きで手巻き
おいおい、デイデイトのどちらも早送りできない機械ってのは、欠陥品なんじゃねえの?だって、時刻合わせでグルグル合わせようとしても、日付と曜日が一緒に動いてしまじゃねーか!おい、これじゃあ使えないぞ、と。
でも、勘違いでした。言い過ぎでした。
時刻合わせの往復で、なんとか日付と曜日を合わせられました。以下、やってみたときの様子です。
ポイントは、「日車送り爪(青)」と、「曜車送り車送りピン(赤)」(正式名称は違うかな?)です。ちなみに黄色は日車の早送りのピン(実際には使用不可)です。
「日車送り爪」は、24時に、日車を1歯送りますが、バネがあり、24時付近の往復の際、時間を逆に戻しても、日車は逆には戻りません。
一方で、「曜車送り車送りピン」はただのピンで、9本の丸い手を出している曜車送り車を送りますが、針を24時付近で逆に戻せば、連動して曜車も逆戻りします。
つまり、この要領で、先に日付を針の往復で合わせてから、曜日を合わせればいいのだと思います
21時頃から、針を送って、
24時に近づくと、日付が「3」から切り替わり、曜日も「FRI」から切り替わりそうになります。
24時で、パチっと、「4」に替わります。「FRI」が「土」に替わりそうですが、
ここで、もういちど針をぐいーんと20時半ぐらいまで戻してみると、曜日は「FRI」に戻りました。
ここで、もういちど、24時まで送ると、さらに日付が、「4」から
「5」に切り替わります。曜日が「土」になっちゃいそうですが、ここで、またグイーンと針を逆に戻して、これをくりかえせば、どんどん「日付のみ」送ることができます。
日付を無事に合わすことができたら、さらに針を進めていけば、ようやく、曜日も、「土」になって、深夜には「SAT」になります。
これで、最後に、時刻合わせをすればいいのです。
でも、これは面倒ですよ。
たとえば、8月15日の土曜日の朝7時に、時計を合わせようと思ったら、時刻合わせの状態にして、
①針を回して、金曜の21時頃にする
②24時付近を何度も往復して、15日にパチッと切り替わったら
③そのまま時計回りに針をすすめれば土曜日になる
④時刻を7時にあわせる
うーん。こまったやつだ!
もしかして、リューズで早送りできる27Jのムーブがキングダイバー1000にも存在しているのでしょうか。わかりません。
まぁ、どうせ、いつもデイもデイトも合わせないので気にしないのです。
この時計はそもそもカッコ重視でいいんだからさぁ、と割り切って使いましょう。
トマソン化した、二時位置の早送り機構を温かい目で見て、この回を締めくくることにしましょう。
(ちなみにランニングの確認のためにダミー時針がついています)
次回、キングダイバーの最終回は、レザーストラップの紹介をする予定です。
(最終回「その6」は、レザーストラップの書庫です)
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