Campanola cal.G910 エコドライブコンプリケーション(第一の終幕と新たな一歩)

ブログを始めてからすぐに、私の大好きなシチズンの高級レーベル;カンパノラについての自分勝手なまとめ記事を書いてきました。今日でとりあえず最終回です。
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2013年の秋に発売された、cal.G910エコドライブコンプリケーションは、少々期待外れの作品でした。ついにパーペチュルカレンダーやミニッツリピーターなどのクォーツコンプリケーションにエコドライブを乗せたという点で、カンパノラの頂点に君臨する素質はあったのですが。
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●専用ムーブメントG910
シチズンの通常のシリーズでエコドライブが主流となってからも、過去の傑作であるコンプリケーションには、エコドライブが乗っていませんでした。もちろん、クロノグラフやフレキシブルソーラーのシリーズではエコドライブがありました。ただ、ミニッツリピーターやパーペチュアルカレンダーを備えたうえで、エコドライブであってほしい、というのがシチズンの通常の時計を良く知っているファンからすれば当然の希望だと思います。それでこそ、シチズンクォーツのほぼ最高のムーブメントであり(あとはムーンフェイズと電波がつけば最強でしょうか)、現代のカンパノラにふさわしいのではないか、と。
そのようなカンパノラオタクの強い要望に応え(たわけではない)、ついに発表されたのだから、期待してしまう。でも、カンパノラにとってムーブメント以上に大事なのがデザインだったわけです。
※個人的にはやっぱりムーンフェイズはほしかったなぁ、お月さんがあると高級感が出るような気がします。
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●スペック
パーペチュアルカレンダー/ミニッツリピーター/クロノグラフ機能(1/4秒,12時間計)/月差±15/光発電エコ・ドライブ/フル充電時約12ヶ月可動/日常生活用防水
デュアル球面サファイアガラス(無反射コーティング)、ケース径44.6mm、厚さ15.9mm


名前があいかわらず、カッコイイ。くろつるばみは、昔のシリーズにもあった名前。ソラノムラクモ、なんだかすごいぞ!チリジラデンのほうがかっこいいけど。

宙叢雲(そらのむらくも)BZ0030-08W
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黒橡(くろつるばみ)BZ0030-08E
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●デザインのコンセプト
中空の美という文字盤上の立体感を一貫してデザインの柱にしてきたカンパノラ。各シリーズでいろいろなテーマがありましたが、今回は、「星の起源」をテーマとして、星の生まれる様子を文字盤で表現したのです。文字板の下半分は、もはや代名詞となった漆をベースとしており、渦巻く暗黒星雲をイメージしています。その中に、曜日・クロノグラフ・月表示・24時間計の4つのサブダイヤルが12時位置から反時計回りに、「原始星が収束し大きくなっていく様」を表しています。
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渦を巻く星間ガスを、電気鋳造による五徳リングと見返しリングで表現しているそうです。なるほど、そういわれてみれば、サブダイヤルの大きさが違っているのは、見た目に新しく、文字盤の雰囲気に奥行きを与えるように感じました。


●デザインの「カンパノラらしくなさ」
私は、2013年の冬、そに鳥を手に入れてから一年ほど、新作が出るというので期待していました。シチズンの「コンセプトショップ」で店員と新作の発表が待ち遠しいような話をしたときに、社内の発表会で見た感じだと今までと雰囲気は違っており、シンプルながお好きでしたらとても気に入ると思いますよ、と言われたのはよく覚えています。バーゼルの時に発表なんだろうな、とわくわくしていたら何の発表もなし。ひっそりと9月頃にホームページで発表されていました。もう、カンパノラはスイスへ連れて行く必要は無いのかねぇ、なんて思って、、、と、話がそれましたが、店員に聞いた通り、確かにシンプル。前作のフレキシブルソーラーの個性的だが派手すぎず、さりげない和のテイストを持つ傑作↓を見た後だったからか、期待外れでした。
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「カンパノラらしくない」という言葉は簡単ですが、カンパノラのデザインは2000年のスタートからだいぶ変化してきていますから、それはおかしいかもしれない。
ケース径は、これまでよりもやや大きくなったけれど、ラグにかけてのカーブがほっそりとしていてこれまでの丸くゴッツイ雰囲気は減っています。プッシュボタンをラインに沿わせた形にしたのはオシャレです。
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過去の、くどいほどの(?)ギョーシェや漆、あるいは和テイストが見て取れず、なおかつ、つるっとして複数のインダイアルがある、というのが特徴です。カンパノラのロゴを外したらら、サテライトウェーブやアテッサやシリーズエイト、等のシチズン時計と間違えるような気もする。ソラノムラクモなんかは、百貨店で生を見せてもらいましたが、高級感はもちろんあるんだけど、なにかカジュアルなスポーツウォッチのような、ラグジュアリーな私の抱いていたカンパノラの雰囲気とは違うと感じました。


インダイアルの大きさの違いが、かっこいいのですがその背面にある漆のスペースがごくわずかであり、文字盤の上と下の半分が違っているというのが落ち着かなくって、悪い意味でのゴチャゴチャ感があるように思いました。(この上下の違いはエコドライブのセルが上側にあるからなのかな、、、)


それから、面積としては小さなものだけど、針のデザインがこれまでと大きく異なります。
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これまでは、針の軸から先端へ向かって広がり、角ばったひし形や台形といった形や、シャープな曲線のものが多かったのに対し、本作は、丸っこく、針の軸が太く先端がとがるサーベルのようなタイプ。インダイヤルは涙型のような針。このデザインがカジュアル感を与えているのだと思いました。
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「カンパノラらしさ」というデザインのマンネリ化を生むことは良くないことなのでしょうが、クモノラクモ・クロツルバミ以降の新作のデザインが、なんとなく以前のテイストに戻っていったように見えるのは、やはりカンパノラらしさを取り戻したかったのではないか、なんて勘ぐってしまうのです。


●和テイストの新作
この、シンプルなデザインで、カンパノラファンに衝撃を与えた(?)2作品のあと、すぐに、同じシリーズ(同じムーブメント&ガワ)の2本が発表されました。
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今回は、星の誕生からさらに進んで、「地球の誕生」をテーマにしました。天と地に分かれ、地球が誕生する物語を漆塗りで「天地開闢(てんちかいびゃく)」を表現したとのことです。これは、技術的理由で文字盤が上下で分かれていることをデザインとして利用したという点で素晴らしいアイデァではないでしょうか。


BZ0030-16E 地焔(つちのほむら)
地殻の形成が始まったころのマグマの燃え盛る様子を朱色と黒色の漆を使い表現。これは、研ぎ出しという製法で、基板上に朱漆、二層目に黒漆を塗り、最後に上面を生漆で仕上げているそうです。炎の部分は3層漆になっています。
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BZ0030-16F 魂耀(こんよう)
過酷な環境から生まれた生命の強さと輝きを、塵地螺鈿を用いて描きました。たしかいに、文字盤下がフレキシブルソーラーのチリジラデンと同じですね!キラキラしています。 
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そらのむらくも・くろつるばみと比べて思うのは、やはり、以前のカンパノラらしさを意識したプラスアルファだったということです。五徳リングのローマン数字は古くは初期のコンプリから代々受け継がれてきたデザインです。
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また、和テイストを意識したコンセプトと色合いになっています。魂耀の黒と金は天満星で完成された和テイストを感じ、先の2本と比べると、カンパノラファンとして最も自然に受け入れられるものでしょう。地焔(つちのほむら)は、現物を見たときには、カッコイイのだけど、高級感より、なんとなくこういうものを想像してしまうドギツサの方が勝ってしまいました。
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いや、まぁ、ガンダムもかっこいいと思いますが。

 
●海外モデルでのムーブメント流用
今回は、カンパノラ専用ムーブメントですよ~~ということでしたが、実は、専用ムーブメントじゃなかったらしい!!今回は、昔の発想とは逆で、「カンパノラのムーブだけど、せっかくだから他にも使おうか」という感じでしょうか。

カンパノラの先輩、だんガレさんのページで発見↓
海外モデルで、コッソリ(?)15万ぐらいで買えるみたいです。どうせカンパノラっぽくないデザインで良ければ、こっちはどうでしょうか。

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●カンパノラのこれから
カンパノラが、複雑クォーツに、凝った文字盤・ガワを合わせて高級時計を作るというコンセプトのもと、行ってきた10年あまりの時計作りは、コンプリケーションにエコドライブが搭載されたことで、一応の終着点を迎えたのでしょう。今回、このシリーズは残念だったというような言い方をしてしまいましたが、新しい時計を買えない貧乏カンパノラファンの僻みだったのかもしれません。いや、(それもあるけどさ、)コンプリケーションにエコドライブ、というこの終着点に期待をしすぎたのかもしれません。
ともかく、シチズンとしても、発想を変えてみようということなったのでしょうか。
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ご存じのとおり、次の作品として機械式の高級時計を出してきました。バーゼルで発表するなら、やっぱり機械式じゃないと、、と思ったのかな。
おもしろいのは、やっぱり、デザインとして、以前の雰囲気をそのまま保っているということなのです。そらのむらくもは意欲作であったが、失敗作だったのだろうか、、、。
 
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←新作
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↑昔の

カンパノラのファンとして、これからのカンパノラの進化と復活に大いに期待しています。が、少なくとも、この新作には興味を持てません。上記のとおり、デザインに目新しさはなく、むしろ文字盤には、中空の美ではなく、間延び感が漂うように感じました。


そして、何より中身です。
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「あらためて腕時計の原点に立ち返る試みに取り組みました。それがまさに、メカニカルムーブメントを搭載するシンプルウオッチの開発です。これまでの一連のカンパノラが、シチズンの先進性を披露するショーケースであったのに対し、むしろ対極のアプローチから“時の愉しみ方”を提案します。」とはシチズンの発表です。
古いシチズンを少しでも知っている人間からすれば、機械式をシチズンで作る力があるだろうに、(2012年に傘下に収めた)ラ・ジュー・ペレのムーブを乗せてきたという事実に、抵抗を感じてしまいます。

「同社は、高級ムーブメントの開発と製造で名を馳せ、様々なブランドにも多数使われています。そして今回、カンパノラの新企画「あらためて腕時計の原点に立ち返る試み」と「時を愉しむ」というカンパノラのコンセプトに基づき、このようなスイス製メカニカルムーブメントを搭載することは極めて自然な選択でした。」
なんで、そうなるべさ!!と思ったファンは多いと思います。

しかも、このフレーズ↓
「今年はまた、幕末に開国した日本とスイスとの間で国交が樹立されてから150周年という記念すべき年にもあたります。スイスの伝統技術に培われたメカニカルムーブメント、日本の美意識が息づくデザイン、国内組み立てによる高品質とを巧みに融合させたカンパノラの「メカニカルコレクション」は、この記念すべき年にデビューを飾り、「時を愉しむ」カンパノラシリーズの歴史に新たな1ページを切り開くマイルストーンを担う腕時計です。」
ウーーム、ジラールペルゴが150周年の記念モデルを出したことに比べちゃうと、なんとも後付けだなー
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ま、とにかく、次作は、せめてシチズンのムーブメント乗った高級機械式であることを願って、カンパノラの記事をとりあえず、終わることにします。
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長々とした駄文、しかも間欠的な連載記事を読んでくれた読者の方、本当にありがとうございました。
 
カンパノラ、ありがとう!カンパノラ、がんばれ!



今日はこんなところで。