Tudor Submariner ref.75090, ETA2824-2(その4;切替車・ローターベアリング)

チュードル ref.75090 ETA2824-2の組立記事が変なところで止まっていました。
その4 外装組立と自動巻き装置です。最終回です。

前回まででとりあえずムーブメントは完成していました。
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まずは外装をくみ上げます。

汚かった外周ベゼルやケースは一応、きれいになっています。それなりに。
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左からベゼルリング、スプリング(といってもただの平たいリング)、風防(新品)、ガスケット、インナーベゼル、ミドルケース、ウラブタ
Oリング(パッキング)は、古いものをそのまま使っています。インナーベゼルの裏側と、ウラブタの二種類あります。コレがインナーベゼルの裏側
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まず、サファイアガラス風防がメチャクチャだったので、ネットで新品を購入。
ムーブメントはAsian ETAではなくて本物ETAにこだわりましたが、コイツだけはどうしても純正は手に入りませんので、汎用品というかPachiモノというか、イヤ、補修品を探しました。普通のサイズのチュードルやロレックスならもちろんあちこちで見つかるし、頑張れば純正のオールドストックも手に入りますが、、このボーイズサイズとなるとマニアックです。
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付属してくる白いガスケットをミドルケースにはめて、その上に風防を乗せます。
それをインナーベゼルで挟み込みます。
サイクロプスレンズがぴったり3時位置にくるように固定するのが難しい!
ちなみにガスケットの上下を間違えるとぴったりはまらずに風防がゆるゆるになります。
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ギューッと。
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汚かった外周ベゼルはつまようじできれいにして
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ベゼルを微妙に浮かせるスプリングをかぶせて、
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ベゼルをカクっと、差し込んで
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ケースはおしまいです。
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ふつうなら、リューズのチューブを交換するのでしょうが、コレも純正を手に入れるのは難しいし、取り外すのも難しそうなのでやめます。そこまでサビもないし、そもそも防水テストをやるわけでもないです。

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リューズの奥に入っているパッキンだけはひどく劣化していたので、Chineseのロレックス用パッキン(新品)でごまかしました。サイズが何種類もあったけどちょうど合うのが無かった、、。商品が悪いのかミドルサイズは微妙に小さいからいけないのか、知識がないのでよくわかりません。
ちょっと小さいOリングをはめ込んで、シリコンオイルをつけます。

調整した結果、こんな感じです。ちょこっと片振りがありますが、全体としては悪くないです。
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さて、自動巻きです。
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ETAに限らず両方向で巻き上げられる機構では切替車が重要です。また、メンテが難しいのです。
内部にツメがあり、ラチェットになっていて、片方が回っているときに、逆方向の回転は、伝え車に伝わらないように空転させる仕組みです。
この二つの歯車は、切替車、切替補助車、などと日本語で訳されるのでしょうが、おそらく、滑りやすいような処理がしてあって(エピラム処理みたいなものらしいですが)、ベンジンで洗い落とすと効果がなくなります。

そうとう汚れているように見えるので、つい洗ってしまいますが、ETA指示としては、この二つの歯車は洗わない&無注油(もちろんホゾには注油ですが)
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もしもひどく汚いかさびているなら、ETAの新品に交換せよ。とのこと。

しかし、海外の掲示板なんかでは、洗ってエピラム処理をして、ツメの部分にはごくわずかに9010みたいな軽い油を注油すればいい、とのうわさを聞きます。
それからルビーの部分には注油

このようにスリットからの(内側の爪)9010注油指示のオイルチャートも見つかります。
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今回、細かい写真を撮っていませんでした。とんぬらさんの記事を参照ください

結局、このときは穴から爪にちょろっとだけ注油したのですが、非常にイマイチな結果でした。手巻きをしたときのローターの供回りも見られました。
ただ、以前、RADOでETAをやった時には同じことをしているのですが、それなりに調子が良かった覚えがあります。。

ローターのベアリングボールにはなるべく少な目に9010を注油しています。

とりあえず、着用して様子を見るために、ウラブタは手回しレベルで締めます(何度か開け閉めが予想されたので)
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とりあえずの完成図イメージ 18
ベゼルの色は真っ黒ではなく、ちょっと紺色がかった黒なのです。針やインデックスの夜光は黄色っぽく変色し、全く光りません(この写真では黄色ではなく白く映っていますが)


自動巻きのチェックに移ります。
ちなみに、ムーブメント完成の段階でチェックしたところ、手巻きでは約41時間動きました。(公式パワリザは40時間ですのでゼンマイ自体はOKです)


朝、出発前に軽く振って時計を動かし始め、
帰宅後、時計を外してからのパワリザをチェックしました。
12時間着用→ 24時間で停止。

これは深刻。やはり切替車が悪いのでしょう。


今回は、奮発した高級機・チュードルなので、あまりアレコレ試したくなかったのです(ホコリが入ったり、思わぬ事故で傷をつけたりする恐れが増えます)、指示通り新品の部品を購入するという、つまらないオチになります。
左が1488 Reversing wheel 切替車
右が1530 Auxiliary reversing wheel 切替補助車
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しかし、確かな効果を確認できました。4回ほどの追加実験で、OKとすることにしました。

10時間着用→30.5時間で停止
11.5時間着用→39時間で停止
12時間着用(ややデスクワークの比率高い)→35時間で停止
11.5時間着用(昼に弁当を買いに徒歩で外出)→40時間で停止

昼飯の調達の10分の歩行は大きいのか。今後はもう少し体のためにも歩くことにしましょう。
ちなみに実用精度は42時間動かして-7秒くらいでした。実用では十分。

これで、満足して裏蓋の本締めを行いました。
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実は、もう一つ部品を交換しています。

長く使っているとローターの軸というかボールベアリング(?)がすり減ってきて、ローターがガタガタ言います。
悪化すればローターが地板やケースを削ってしまいます。この個体も結構ガタが来ていました。
これが、表現できないんだよなぁ、と思いながら、頑張って写真を撮りました、、

平置き時
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棒で押すとローターが傾きます(わかるカナ、、)撮影のためには手がもう一本ほしい、、。
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ウーム上の写真と違いがわからん、、たしかにそれほど重症ではありません。地板やケースに傷はありませんし。


でも、巻き上げ効率に影響しそうだし、末永く使うために、一応、交換しました。

1497 ball bearing
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まず、古いヤツを外します。
ポンス台に、ローター本体を支える、何かアタッチメントがほしい、、と思っていたら、ちょうど良いのを発見。風防絞りのコマ。
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このように乗っけて、押さえます。
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トントン、とそれほど大きな力はいりません。
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ストン、と古いベアリングが落ちます。
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場所が無くて、レザークラフトの場所でやっています。汚らしいですね。

新品を入れるときは、ローターをきれいにして、、もとの机に移動。
今度は普通のポンス台の受けでやります。ローターの表側(刻印・装飾がある側を傷つけないように一応養生的なことをしました。
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これでバッチリ。

全然ガタがなく、スムーズに回りました。嬉しい!!
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これが交換後の写真ですが、、まぁ、伝わらないですね。




ということで、贅沢に純正品への交換が相次いだわけですが、おかげでなんとなくフレッシュな気分になったETA君です。
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精度を考えても、いじりやすさ・パーツの入手を考えてもETAは素晴らしいじゃないか!
ETAぽンがダメだとおっしゃるツウの気持ちは、せっかくブランドがいろいろ違って高い価格をつけても中身が同じだからな、というガッカリ感なのでしょうか。確かに裏スケだったらそう思うかもしれませんね。

それとは無関係に、ムーブ・パーツ供給がなくなるという将来を考えて、各社、自社ムーブ自社ムーブと盛り上がっているようですね。(前号だったかの日本版クロノスに特集がありました)今年のバーゼルではチュードルまで、自社ムーブとかなんとか
(価格的に、私にとって現行品は全く関係ないのですが)。

そうそう、価格だけじゃなくてデカさ。。最近、ようやくデカ厚ブームは終わってきたのでしょうかね。
せっかく復刻するなら、二つ目クロノやイカサブの復刻を昔と同じ径で出してくれればいいのに。セイコーの70年代のスポーツとか、こういったデザイン、最近、すごく好きなんです。でも、現行のように42ミリとか43ミリとなると完全にほしい気持ちは無くなります。。いや、ま、どっちにしても価格面で私には手が出ません。
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とまぁ、今日はこんなところで。

読んでくれてありがとうございました。


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