チュードル クロノタイム ref.79260P cal.7750(その1:分解編・ETA 7750のクロノグラフ機構の解説)

Tudor Chronotime ref.79260P cal.7750
その1 分解編
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チュードル・プリンスデイト
クロノタイム
Ref.79260P
Cal. 7750(ETA
自動巻き
25石
タイコノートの無垢ブレスを着せて
(ちょっと重いんだよなぁ)

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実に久々の分解記事です
チュードルのクロノタイムは、ロレックスに引っ張られて(業界サンの思惑どおりに)近年、やたらに値上がりしてるみたいです。
特に、モンテカルロは150とか200マンとか、前からすごい値段だけど、
上の写真のロービートとかで特集される、カマボコ(Big Block)といわれる初期のクロノタイムなんかも100万近くなってきてるんですって。


アホラシ、と思いながら、ETA7750を分解するなら、チュードル・クロノタイム!と前から決めていましたので、カマボコじゃない、79260Pを1年ぐらい前に手に入れました。
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2000年台初期の雑誌かな。このモデルは20万ちょっとですかね。

Pというのはラグがポリッシュと言う意味だそうです。でも、この個体は前の持ち主が敢えて、ラグをヘアラインにしたようです。コッチのほうがかっかこいいもんね。
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雑誌でもカマボコ(ref791~)と流線型(ref792~)の比較の写真がよく出てきます↑

この個体はカマボコじゃないので横から見たらひかくてきシャープなんだけど、それでもムーブメント自体がデッカイので、なかなかに分厚いです。
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比較してみると、私が持ってるおそらくもっとも分厚い部類のセイコー・クロノよりは薄いですね。でも存在感はけっこうありますね。
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セイコーのスピードタイマー6138(2ツ目)も負けずにかっこいいです。
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デカさも同じぐらい。

さて、前置きはこのぐらいにして分解レポートです。ETAの7750は多くのメーカーで採用される優れたムーブメントです。分解や解説記事も多いので、イマサラなのですが。
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入手時の状態です。ヤフオクじゃなくて委託ショップです。ギャランティ無し、Pなのにヘアライン仕上げ、ブレスもちょっと違う時期の三連ブレス、ということで比較的安価に購入しました。ロレックスマニアではないので、付属品というのにはこだわらないのです。附属していた純正の三連ブレスは生活苦のために売り渡しました。
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見た目の状態はすごく良かったです。ベゼルや裏蓋に多少のキズがあるぐらいです。文字盤も針もとってもきれい。

ただ、中身はそろそろOHと言う感じでした。手巻きをするとローターが供回りして、おそらくもう切替車がダメだったのです。歩度は0秒とすばらしかったです。
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裏蓋を開けて、針を12時に合わせたら、ネジコミリューズを開放します。
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先にローターを外しました。
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そしたらば、オシドリピンを押してマキシンを引き抜きます。

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ムーブメントを台に乗せます。きれいな真っ白の文字盤です。
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横から見るとムーブの分厚さが良くわかります。センターの3本の針のクリアランスを良く覚えておきます。
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中央を抜いたら、3個のインダイヤルの針を抜きます。
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干支足を留めているフックはココです
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ぐるっと引き出して、
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そーっと丁寧に文字盤を外します。
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文字盤や針を汚さないように閉まっておきます
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あと、カレンダーディスクも汚さないように先に外します
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押さえを何枚か外してから
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ジャンパーの細いバネをなくさないように
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この状態で、とりあえず、表に行きます。
すでにローターを外してあります。
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まず、クロノの受けを外します。
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切替車です。こいつは他のドナーから移植しました。
切替車の注油には悩まされていましたが、最近、なんだかちょっと落ち着いてきました。その辺はまた、いつか記事に。
この個体については、交換で済ませたのですけどね。

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受けを外すと、このように結構複雑な、クロノの全貌が見えます。

せっかくなので、主用パーツの名前を載せておきます。
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クロノボタンを押すと、スイングピニオンがわずかに傾いて、四番車(秒針)から、クロノ秒針に伝達されます。コレがクロノの肝のひとつです。
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オールドクロノグラフでは、アームが動いてカッコよくクラッチがつながるのですが、7750では地味にコイツが傾くだけ。

では、クロノパーツをどんどん外します。
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あとでわからなくなりそうなので、写真をマメに撮っておきます。
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ボタンのバネは画面の右下あたりに見えます。コレを外すと、こんなです↓
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それから、クロノの司令塔であるカムがよく見えてきます。なにがどうかみ合ってるのかちょっとわかり辛いのですが、分解・組み立てしてみたら、じつに合理的に、(当たり前なんだけど)無駄なモノがなく全てがしっかりと配置され、機能しているんだなぁと関心させられました。
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合理的といえば、そうなんですが、素っ気なくもあります。例えば、四つ穴の開いている車が角穴車で、左方に引っかかっているただのほそいバネがコハゼです。
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カムを取り去って、だいたい、クロノパーツが終わりました。
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角穴車とを外したら、テンプを取りました。
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これで、クロノパーツを受けていた地板(?)を外したらば
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あとは普通の時計と同じです。
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ETA輪列という配置で、香箱から、2、3、4、と続いてガンギ車、アンクルです。
ツヅミ車から大き目の板が延びているのですが、これがハックレバーです。
リューズを引くと、先端のフックでテンワを停止させます。

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表はこれでだいたい終わりです。

裏へ行って、どんどん外します。パーツが多いです。
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画面の中央下が、12時間計の歯車です。
樹脂パーツがひとつ見えますが、これは12時間計を停止するパーツで、その右下に見える板上の大きいパーツが、12時間計を帰零させるリセットハンマー。
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ほぼ、外し終わりました。重要なのは、画面の中央斜め左下にみえる車で、ドライビングピニオンで、マサツ車になっています。セイコーとかのいつもの中三針ではツツカナがマサツ車で2番車にかぶさっています。
ここでは、このドライビングが、ムーブメントの表側の二番車とマサツでかぶさっています。ゆるすぎてもきつすぎてもいけない大事なパーツです。
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このように剣抜きでそうっと外しました。

あとは、マキシンまわりです。
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早送り機能のための歯車はスライド式に入ってます。

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カンヌキのレバーとかが、考え抜かれた構造になっています。古典的なものとはだいぶ雰囲気が違います。紛失しにくく、セットもしやすい構造になってます。
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あとは、そのバネと、ツヅミ車・キチ車、マキシンを外したら完了です。

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さすが、クロノなのでパーツが多いですね。

ベンジンで洗いました。油のこびりついているものはハケで予洗い、それで、超音波洗浄です。次回の記事に続きます。


最後にもう一度、クロノのメインパーツの紹介と、
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クロノ機構の解説図です。イメージ 47
12時間計は香箱から直接力が行きますが、クロノ針(秒)と分積算は、表の輪列にスイングピニオンから伝達されるというのが良くわかる図ですね。
(ETAの技術解説書より一部改)


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デイトナは、今のデザインよりも、クロノタイムのデザインの元になった手巻きの古いヤツのほうがカッコイイですよね(ref.6263)↓
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派手さは無いけど、渋いです。サイズも38ミリぐらいだったので、本当はチュードルよりコッチのほうが好きですが、お値段が500万とかだから、全く話にならないのです。
実際に使用するならメンテを考えればETA7750を積んでるチュードルのほうが安心でしょうね。
モノトーンで、機能重視のデザインだけど、とってもかっこいいクロノグラフです。
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今日はこんなところで。次回、組立編に続きます。
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