ハミルトン パンユーロ 復刻 クロノ針の差し直し eリングの交換 Hamilton Pan Euro 1971 H35710(H31)

ハミルトン

パン・ユーロ限定モデル

H35716545 H35710

Cal. H31 ETA7753ベース 横配置インダイアル

会社の先輩で時計好きがいるんですが、中古で購入して愛用していたというハミルトンの自動巻きクロノの針ズレを直してくれということでした。

確かに、帰零ボタンをおしても、この通り。

 

ずれてしまう原因はいろいろありますが、よくあるのは使用によりセンター針のハカマが緩んでしまうということ。本当はしっかりハカマを締めなおすことが必要ですが、これは非常に怖い。

世の中にはこういう締めなおす工具もあるんですって、すごいね↓

どうでもよい自分のジャンクであれば、ツツカナのように、ポンス台を使ってかるく叩いて締めてしまったかもしれませんが、パーツの替えもない、人様の高級時計ですから危険なことはしません。

 

とりあえずの応急処置で、単に、刺しなおしただけですので、また使っていれば緩んでくるかも。

 

仮に交換用の針パーツが無くても、プロならここまでするのですが↓

針の修理(前編)。 | ゼンマイワークスの日常。

 

 

完全分解はイヤなので(復帰が心配)、なるべく最小限で、、と思いましたが、結局、メインプレートを外したので、色々まとめてとうまいこと嵌めないといけなくて、苦労しました。

 

もともとこういうやつだったんですね。たしかに、1970年代というルックス。

茶色のベルトに丸いパンチ穴があるのもレトロです。

 

この個体には、後付けのベルトで、ヒルシュのネイビーのラバーがついています。

かっこいいんですよ。良く似合っていてスポーティーな感じです。

1971本限定ということで、シリアルナンバーが入ってます。

復刻盤には、あと2種類、ウラスケ版があるんです。こっちは限定じゃないんですが、裏蓋以外は同じ。

 

 

裏蓋はねじ込み式じゃなくてネジで止めるやつね。

以前チュードルのクロノタイムをやったので7750はだいたいは出来たのですが、ETA7750(あるいは7753)と何が違うのか、もっともらしくH31などと名前を付けていますが、とりあえずパワーリザーブ最大60時間になったらしいです。

 

 

ところで、クロノ針のズレだけでなくて、手巻きが異常に重くて、巻こうとすると、ローターがグルングルンと回ってしまいます。

時計屋がすすめるように、ワインディングマシーンで回し続けているらしいので、だいぶ機械もお疲れなのかもしれません。

 

この写真のように削り粉が出ています。切替車の歯を抑えるバネですかね。

ココ

 

とりあえず、切替車だけでもきれいに洗って、エピラム処理をして滑りを良くしてみました。

でも、切替車だけ、、というわけにはいかないのですよね

この受けで全部噛んでるからほんとうにめんどくさいんです。何度も失敗してしまいました。

 

針を刺しなおして、

 

テンシンの受け石だけでも、きれいに洗ってから注油しなおして。

その他、クロノカムの接触面とか、可能な限りの注油はしておきました。

 

で、おわろうかなと思ったら

クロノボタンが抜けるんですよ。

 

 

今までよくわかっていなかったのだけれど、クロノのプッシュボタンはこの、Eリングとかいうやつでケースから抜けないように止められています。プッシュボタンに脇から噛ませるんですね。

 

 

Cooの腕時計さんのブログでも、何度か登場してます↓

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こいつがサビて折れていたんです。

 

 

これは、ボタン二つを押した状態。交換した後の状態。リングが噛んでるのが見えます。こいつかストッパーになっていて、プッシャーがケースから取れないのです。

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Eリングとか、ワッシャークリップとか呼ばれるようで、国内のネットショップでは手に入らなかったので
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eBayで購入。

中国から送料の安いやつで頼んだので1か月ぐらい待ちました。ようやくこれで完成です。

 

巻き芯にグリス、Oリングにグリス

 

裏蓋ネジにロックタイトを付けて



完成です。歩度も異常なし

 

いやーこのデカさと定価の17万円という値段を除けば私も欲しいと思うデザインの時計でした。

ハミルトンさんに17万も払えないからセイコーのスピードタイマーの状態のいいやつを買うほうがいいかなあ。

 

クロノ針のズレはそれほどパチパチ遊びまくったわけじゃないとしえても起こりうる現象。

零の際は非常に大きな力がかかるため、クロノ針が、(軸から抜けはしないものの)ゆるんでしまう。このページの中段あたりのスローモーションの動画を見ると、ものすごい力で押し戻されているのがよくわかり、使うのが怖くなりますね↓

7750: Zero-Reset Hand Alignment — Nathan Bobinchak

ようするに、クロノグラフなんて、使わない、いや、買わないのがベストですねぇ。

パンユーロ復刻も、クロノじゃないやつも出ていたそうですし

まぁでもあの機構があるということがうれしいのでしょう。。それでもスピマスをバチバチやりたい人は、替えのストック、ジェネリックパーツをあつめておくのがいいですよね。

 

ご本人にお返ししてから、数か月経ちますが、今のところ、センター針は異常なし、ということで、良かったです。

 

今日はこんなところで。