SEIKO Speed Timer 6139-6000 (その3:噂の「58秒止まり」)

セイコー スピードタイマー 6139のつづき。その3。

前回、ようやっと終わるかと思ったら、大きな問題が生じました。

(LowBeatでは最近、クロノの記事を二回連続でやっていますね)
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6139でよく起こる故障は二つあります。
(今回、6139の解説にあるトラブルや整備個所をほぼ一通り、味わってしまいましたが、、)

その一つが、「58秒止まり」というやつで、クロノを動かしていると、秒針が58秒付近で止まってしまうというヤツです。
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このように、積算計を見ると4分でまでは動いていたのに、止まってしまいました。
テンプも止まっているので時計自体が止まっています。

58秒で止まるということは、クロノ針の「分送り爪」が、中間車の歯を送ることができずに引っかかっているということです。
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58秒で止まる場合、技術解説書の解決法では、前回の記事で書いたように(上図)、分送り爪や、分躍制レバーのかみ合いを微妙にいじって、スムーズにいくようにしろ、と書いてあります。
もちろん、前回記事で書いたように、確認したはずだったのですが、、、、

ポイントは、ゼンマイは巻ききった状態ではなく、「角穴車を1/2回転だけした状態」で、問題なく作動できるようにしなければいけないのです。
前回確認したときは、もっとトルクがあったから、ツメが頑張れたのでしょうか、、、

ともかく、同じように各所を微妙にいじりながら、なんとか、爪が歯を送ってくれるようにします。

ちょっといじっては、爪が歯を送る場所に到達するまで、一分間、この窓を見ながら、手に汗握ってハラハラ待つわけです、、、
イメージ 5こんどこそ!それいけ!、たのむ、、後生だ、、、!と。
でも、何度やっても、空しくカチっと爪が止まってしまいます。

試しに、もう少しゼンマイを巻いてみたりするとうまく乗り越えたり、、不安定です。
文字盤を上にしたときのほうが、止まりやすいような感触もありました。。
何度か載せている、この上の写真、ルビーをよく見てもらうと、汚れているように見えました。

分解してみたら!なんということでしょう。
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クロノグラフ受けのルビーがこんなことに。ホゾが乗る側が大きく欠けていました。
これは、文字盤を上にしたとき、特にクロノ針がここに力がかかることなります。
原因はコイツでした。。


石を付け替えればいいんだよ!

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穴石をいじくったことなど無かったので、うまく入れることはとても難しいのです。基本を知らないので、、、。
第一、ジャンク箱を探してもピッタリのものなど、そうそうあるものじゃありません。しかたがないので、例のジャンクから石を取ってきます。
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右側に置いた、「金色車ムーブ」の受見ると、このように窓の形や、中間車が独立していたりなど、私がいじったものと様子は違っていますが、石のサイズは同じ。
右が取ってきたヤツです。
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タガネとポンスをアレコレやって、なんとかかんとか、急ごしらえのルビー工事です。
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なんとか、既定のトルク(角穴車を1/2回転しただけ)でも、無事に針を送ることができるようになりました。

これまでに何度、クロノ部分を分解組立したことか、、、
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こういう感じで動くわけですね↓
イメージ 12クロノ針の爪が中間車の歯に近づき

イメージ 13カチっと爪がひっかかり、

イメージ 14中間車を右に、分車を左に回し、躍制レバーが上に持ち上がって
イメージ 15躍制レバーがカチっと下がって分車の歯を一分だけ送る。


ということで、「58秒止まり」は解決。
まさか、石が欠けているとは思わず、、洗浄の時によく確認しなければいけませんでした。
むしろひょっとしたら自分が割ったのかもしれませんね。
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今日は、こんなところで。
「その4」に続きます。

ウンザリもせずに最後まで読んでくれてありがとうございます。

次回は、もう一つの鉄板トラブル「帰零ズレ」です。


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