6146-8000 Grand Seiko (グランドシッパイ その2: ゼンマイは曲者)

先日の続きです。
6146A
グランドセイコー自動巻きハイビートです
(6146-8000)
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爺さまからもらったノーメンテの61系GSを分解し、洗浄したところまででした。
組立、そして復活までには、アレコレ手を尽くしながら、3か月以上かかりました。
そんなに難しい症状ではなく、単に部品が手に入らないということですが。
グランドセイコーならぬグランドシッパイの日々を記事に。





●開かずの香箱●
手巻きをすると異常なカシャカシャガチャガチャ音がしますから、何とか洗浄したい、と思ったのですが、この香箱は、カシメてあり、そう簡単に開きません。
だてにDO NOT OPENと書いてないです。基本的にはメーカーに出せ、ということなのです。

しかも、過去に町の時計屋で開けたのであれば、多少緩んでいるのでしょうが、何しろ一度も手を入れてないようですから。ネットで調べた限り、勝手にいじるなというセイコーの声が時計屋にも伝わっていたのでしょう。
香箱は開けない、ガンギとアンクル爪の特殊な(?)エピラム処理を乱さないためにも、軽く洗う程度にしろ。ということです。
そうはいっても、この個体の現状で、これに従う時計師もいないでしょう。
なんとかあける必要があります。


そうはいっても、悲しきかな。特に道具があるわけでもないし、経験もありません。
しかも失敗したときが心配です。

仕方なく、あっさりとプロの力を借りることにします。
というのも、ゼンマイが切れているような気もしたので、どうせなら、汎用ゼンマイに代えてもらう必要があるな、とも思ったので。

親切なパーツ屋さんに頼んで、ゼンマイ交換修理ということで、フタをあけて、合わせゼンマイも購入、という話にしてきました。
これは、あっさり解決しそうな匂いがしたのです。

ところが、プロも、なかなか開けられない、ということでした。
壊れたときの代えパーツが無いので、慎重にやっているとのこと。
1か月半くらいかかったでしょうか。(まあ年末だったし他の仕事がいっぱいあったのでしょうが)
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ようやく開けてもらいました。その時の写真。
ゼンマイは切れていませんが、モリブデン入りグリスはもうカピカピでひどい状態。

ま、ともかく、合わせゼンマイを作ってもらうという当初の話通りに、作ってもらいました。このゼンマイも傷んでるだろうから。


●ゼンマイの方向●
開いてからもずいぶんかかりましたが、ようやく私のもとに、香箱が帰ってきました。いつもの、セイコーグリスS-3を入れて、、、
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と、思ったら、よく見てください↑

ゼンマイが逆向きですよ!香箱真も上下逆。オーイ!

クレーム言って入れ替えてもらおうかと思ったけど、時間かかるだろうし、まあ、これなら自分で入れればいいや、ね。
ということで、せっかくの新品(汎用)ゼンマイをビョヨヨーンと、いつも通りに取り出して、手で入れていきました。

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ヨーシ、入れ替えたドー。向きは大丈夫。

あれ、、、オイオイ↑
香箱真とゼンマイの内端を見て下さい。
ユルユルです。

これじゃあ香箱真に引っかからないので巻けません。よく見ると、向きを入れ替える前から、届いた時点でユルユルなんじゃないの。ひとつ上の写真を見てもらうとわかります。


というより、元の純正ゼンマイと比べたこの写真を見ればよくわかります。左が純正。
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おいおい、せっかく、「合わせゼンマイ」ということでお願いしたのに、芯までは合わせてくれないのかよー。
というより、そのくらいは自分でやってみろ、ということでしょうか。

しょうがないので、内端をいじって、縮めようと試みます。
こういう作業は、細いヤットコみたいのは持っていないので、固めのピンセットでやります。

うーん、
ソレ、
アレ、
エイヤ、
うー、。

ソリャー




パキ!





オメガシーマスターの時にもやってしまったのですが、結局、内端を折ってしまいました。
こういう作業はバーナー使って、焼きナマシ、という、少し金属を柔らかい状態にして変形させ、そのあとまた焼き戻し?して固くする、ということが必要らしいです。

多少なら力技でもできるんでしょうが。

いずれにしても私には手に負えない領域です。

「よく考えると、元の純正のゼンマイは返してもらったじゃないか、それを使えばいいじゃんか!!」
この考えはしごくまともです。

ところが、待ちに待った香箱が来て、まさかの逆向き、そして内端の径ズレ。
という状況の中、
私の未熟な心は、焦っていました。
ハヤル気持ちを抑えられないのでした。
テンパっていました。
(こういう人は向いていないですね。)

イケー、どんどんイケー。

と、いつも通り純正ゼンマイを手で巻きいれようとしたとき

パキ!

スリッピングアタッチメントに注目
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折ってしまったアタッチメントは、素材がゼンマイよりかなり厚く硬いので、手で入れるのは難しいのです。
相当慎重にやるべき作業なのです。(弱っていたというのもあるのかな?)


とにかく、この失敗は「グランド・シッパイ」です。

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悔やんでも悔やみきれません。
少なくとも私のガラ箱のストックに同じタイプのものはありません。

ともかく、合わせゼンマイを頼んだパーツ屋に、再度、お願いに行くしかありません。

「おい!オヤジ!頼んだゼンマイ、向きが逆だったぞコラ!!香箱真もあってねえぞ!オレが直したらやったらオレチャッタンダヨね。ゴメンナサイ
という勢いで、、、、いや、半分平謝りでお願いしたら、まあこちらのミスですから、と、無料でやり直してくれました。なんてやさしいオジサン!!素敵だ。

こうして、またしばらくパーツ屋からの連絡を待つ日々になりました。



ちょっと長くなりそうなので、次回につづく。
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