続きです。
6146A グランドセイコー自動巻きハイビート (6146-8000)
グランドシッパイ その3 完結編です。
爺さまからもらったノーメンテの61系GSを分解し、洗浄し、ゼンマイで苦労していたところです。再度、パーツ屋さんにお願いして汎用ゼンマイを入れてもらおう、というところまでお話ししました。
ゼンマイは曲がっているモノです。曲者です。
●スリッピングアタッチメント●
頼りになる、親切なパーツ屋のオヤッサンのおかげで、香箱が帰ってきました!
今度はゼンマイの向きも、内端の径もオッケーです。
ところが、ショッカー、いや、デストロンを倒してめでたしめでたし、とはならないのです。
スリッピングアタッチメントが機能しないのです。
前回もお話しした通り、この61GSのスリッピングアタッチメントは
このようにゼンマイの一番端に付いていて、非常に固く、真っ直ぐなモノです。
(注:折れてます)
一方で、作ってもらった汎用ゼンマイはこのタイプ。
この汎用タイプでは、巻き上げていくと、3周くらいでゼンマイが滑ってしまうのです。
この方が、滑らなそうな気がしたのですが、アタッチメントの湾曲具合をいじったりしたのですが、どうにも滑ってしまいます。硬い純正のアタッチメントのほうがフンバリが効くんでしょうか。
グリスの量も2回ほど調整したのですがダメでした。
なんでだろう、、?
経験のある人なら、色々考えればわかるのかもしれませんが、私にはよくわかりませんでした。
香箱の内側には引っかかりはなく、スリッピングアタッチメントと、グリスのみの調整で合わせるというゼンマイだと思います。
まあ、香箱だけ渡して、そこまで完璧にしろとオヤッサンに頼むのは酷な話です。
もう無理だろうと、今回はオヤッサンに泣きつくのはあきらめました。
こうなるとやはり純正ゼンマイを壊してしまった失敗が悔やまれます。
●ゼンマイ探しの旅●
純正のものは手に入らなくても、どこかにあるんじゃないかと、他のパーツ屋さんや、中古時計屋さんに連絡を取りました。
「61GSのゼンマイ(香箱)はありませんかねぇ、、?」と。
パーツ屋ならともかく、アンティーク時計屋にそんなことを頼んで、ホイヨ、とゼンマイをくれるとも思えませんよね。ケンモホロロ。
ただ、ある、親切なアンティーク屋が、ゼンマイの修理対応で、一応合うものを探してあげるという、答えをくれたのです。しかも、滑らないように調整してくれそうな気配。これは、うれしかったですね。
待つこと2週間。対応が社内で再検討されたのか、変にうまくいかなくて泥沼になっても一文も得しないだろうという判断か、結局ゼンマイを一つ売ってくれただけでした。
譲ってくれたのは、古いゼンマイで、結構なお値段でしたが、一応サイズは合いそう、、。でも、スリッピングアタッチメントは、硬いやつではありません。
今更断れず、これを買うことに。
これじゃあ、きっとうまくいかないだろう、とあきらめ、頭を冷やそう。
と、ヤフオクを見ていました。
おおおお!!
なんと純正が出品されています!!
めったに出ないものですから、競りました、、。
でもここであきらめたら復活は無理かもしれないと、ブっこみました。
もともと、いつもお世話になっているセイコーパーツのページによれば
ゼンマイ付き香箱で、型番は、201615なのです。
今回入手したゼンマイは401616
(内側のゼンマイを包んでいる金具には401615と書かれています)
追記 2016.3.25
※ブログ仲間のとんぬらさんをはじめ、ご指摘をいただきました。
これは純正ではありません。幅はおなじでぴったりですが、61系のものですがハイビート用ではありません。商品説明を鵜呑みにして、勘違いして高い授業料でした。
トルクが足りず、振り角が出ません。現在、長期対応中です。。。
特に、歩度がひどいということはありませんが。
香箱に入った状態のGS純正ゼンマイは手に入りません!
こうして、めでたく香箱は終了しました。S-3グリスを入れます。
6周半くらいまで巻き上げてから滑るようになりました。よかったよかった。
●テンションリング付風防●
さて、これでムーブメントは完了しまして、あとは外装です。
私は、ちゃんとした研磨の道具がなく、根気もないので、
いつもあまりピカピカにできないのですが、特に今回は、「セイコースタイル」のケースです。
手で磨いた程度で、終わりにしちゃいます。
爺さまの思い出を削るのも良くなかろう、と、正当化。
プラ風防もちょっとしたキズを落としました。サンエーパールで。
ようやく長い旅が終わると思ったところ。
風防が入らないんですよ、、。
このヘリの内側に風防がはまるはずなんです。
どうにも入らない、、。
風防の径がケースのヘリよりややデカイわけです。
そして内側の金属のテンションリングが外側に押し出すので、
無理やり、全体を縮めてヘリに押し込めば、リングとヘリで風防が抑え込まれる、というわけですね。
ベゼルは風防固定に寄与しないというタイプです。
理屈は分かります。ちょっと縮めて、押し込む、ということです。
一番よく使っているのはこのあたりのものです。もちろん、ダメです。
こいつは、あくまでベゼルを押し込むやつですから、こいつでもダメです。
こいつならいけそう!!風防絞り機
下のコマを小さ目にして上のコマで風防全体を絞るんです。
慎重にね。慎重に。
ピキ!!!!
やってしまいました。
この、テープ留めはなんの意味もありません。ネタでしかありません。
考えてみれば、金属のリングが入ってるんだから、絞ろうとすればプラが負けちゃうわけです。この絞り機は、リングなしの風防を絞るためにあるんだよね。
くそーーー。
風防ならなんとか手に入ります。純正新品をゲット。
高くツイタナ~~~。
さすがのバカも慎重になってきました。
急がば回れで、別の工具を購入。
コイツはどうか!これなら中心のプラに負担をかけずに絞れるんじゃないか。
ベルジョンのグラスリフター(グラスヒッター?)
下にある部品に風防を入れて、ツメでぐぐっと絞ってやるんですが、、、
だめです。いくらここで絞っても、ケースにはめるとき、。ケースのヘリにツメがひっかかって、絞った風防を解放できないんです。
ああ、洋物などを持ち込むからいけないのだよ。やっぱりセイコーでないと。
と、今度は、セイコーのコレを購入。
ただし、これは、ワンピースケースの風防を外すもの。
これもベルジョンと同じ、いやベルジョン以上に、うまくいきません。用途が違うんですよ。
今後のために役立ちそうな工具たちですが、金と時間がかかり、さすがにテンションが下がってきました。なのに、風防のテンションリングはアゲアゲです。
はやく気づけって感じですが、これ↓テンションリング用コマ。
実はこういったものが販売されているのは知っていたのですが、MKSの工具を持っていなかったので、MKSを避けてきたのです。
(上のほうで写真に映っているキカイは後で購入したMKSの本体です)
結局、この風防も壊したら大変、ということで、またプロの力を借りることに。
オヤッサンに相談したのです。
風防の内側をけずったりしないとはいらないこともあるよ、と言われたけど、これは違います。正しいコマを使えばよかっただけ。
結局、工賃を払ってやってもらいました。瞬殺。
径を縮めるのは確かですが、絞り機でやってはだめなんです。
ピッタリと合ったテンションリング付風防の専用コマで、上からガツンとはめてやる、というのが正しいはめ方。大変勉強になりました。専用コマを買いました。
とにかく終わったのです。
6146Aグランド・シッパイ、ここにオーバーホール完了です。
感無量です。
やっと祖父に報告できました。
精度もけっこういいです。うれしいですねぇ。
見苦しいほど大失敗な分解日記でした。
●補足:マジックレバーの油だまり●
そういえば、基本は6106をベースにしているそうです。このキカイは。
といってもパーツが流用できるわけであはりません。
6146に特徴的なのはハイビートだから、パット見はガンギの歯が違うとか、そのくらいでしたが、もうひとつ。
マジックレバーのピンが入るところのルビーが油だまりになっています。
こちら側からは、穴が見えません。
このほうが長持ちするんでしょうね。
こちらが通常のタイプ。ルビーがあってピンが見えますね。
●クロコダイルストラップ●
クリケットくんはOHするまで使わないようにしており、取り外しました。
このGSの文字盤の焼けた色と、濃い紫色がピッタリだったので気に入っています。
奮発して、純正尾錠を買いました。
ほんとは「GS」マークのほうが、当時のものに近いのですが。
500円安かったんですよ。
いまさら500円ケチってもしゃあないだろうに。
長ったらしいツブヤキを最後まで読んでくれてありがとうございます。
今日はこんなところで。
登録してみました。