SEIKO Sportsmatic 5 6619 (楽しくも悲しいジャンクいじり(その1))

こんにちは。
ジャンクいじりの醍醐味というか宿命というか、色々楽しい経験をしましたのでご報告です(その1)。

ひとつ前の日本版Chronosの、好評シリーズ(?)「時計愛好家の生活」で、何人かの時計好きが取材されてていました。
その中で、かのマチックの巨匠、Mr.K氏(O.K.氏)が取材されていました。(もちろん有名な彼のHP「マチックアーカイブ」をご覧になっている方は多いと思いますが、見ていない方は必見!)
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セイコーマチックアーカイブトップページより)

他の愛好家は実業家や医者などの大金持ち(毎回そういう人が多いですが)、あまり共感が持てませんでしたが、彼の冷静ながらセイコーマチックにかける情熱に、セイコーファンとして、一般人として(?)大変はげまされました。
よし、次は何か、マチック系列をやろうと思いました。

私のタイムマシンの入口、
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もとい、ジャンク時計の引出をあけて、いくつかのマチックがいましたが、この変わり文字盤が気になり、着手しました↓
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セイコースポーツマチック5

6619
1964年~
18000回/時(5振動)
21石
自動巻き

わけあって、入手時の状態からの写真です。一応動くけど、すぐ止まるジャンク。
もちろん手巻きがないので、ゼンマイ切れかどうかはわからないです。

マチックと言っても、セイコーファイブへの流れで、この文字盤は、シンボルとも言える「独楽マーク」は無く、ファイブの盾マークですね。
66系マチックの最終型で、最大ヒット作で、後のファイブの礎となった時計です。

日付の早送りがリューズのプッシュでできるタイプは、このキャリバーが初めて。
かなり色々な外装があったようで、文字盤も若者向けということで、今回はかなり立体の植字がきらきらして見返しの部分も渦を巻いたキラキラリングです。

きっと若者に人気があったのでしょう。ド派手な青や紫、オレンジなんかのクロコと合わせたいところです。

●油ベッチョリ分解編●
裏蓋はスナップ式ですが、イルカマークがついて、防水がすこし効くよ、ってことですね。
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御覧のようにガワがひどすぎる状態、、、。研磨とかいうレベルでないけど、ラグが生きてるから私はこれでいいやーと思っていました。
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でも、実は、最後にはこのボロさがモノを言います。。

裏蓋をあけると、機械にサビはないです。
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ローターについている繊維みたいのが気になりました。なんだかわからないけど。

ベゼルを外した感じもきたないなぁ、という感想。文字盤はきれい。
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お、この文字盤周囲の色はナニ?
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周囲を油が取り囲んでします。
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なんでこういうことになるのか?
ともかくロディコでお掃除しました。
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このキカイは自動巻きのベアリングの部分が外れます。
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うん、マジックレバーのところも油が。
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コハゼバネが角穴車にくっついてしまうんですよ。バネをはめるミゾが浅いせいか、これが、組み立て後も気になりました。
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輪列をはずしまして
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うーん、あの油の調子で予想できたように、香箱車のほぞもすごい油。ここから漏れてるのか、、?
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裏にいって曜車をはずしたら、ここもベチョー。
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紛失をたくらんで、バネが飛び跳ねる準備をしています。神隠しに気を付けて、、。
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オシドリやカンヌキオサエがちょっと不思議な形。プッシュ式と関係しています。
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●ゼンマイ編●
今回は、以前の反省を生かし、スリッピングアタッチメントのすべる具合とパワリザの確認をやってみました。
まず分解前にどんなかを見ておきます。先輩に教わったように、角穴車を付けた状態でグルーガンで棒に固定。
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これはタガネセットから拝借した棒です。

香箱車を左手でつかんで固定し、右手でぐるぐる回していきます。巻ききってすべる時のトルクの変化をあまり感じないまま、7、8、9、10周と巻くことができました。ゆっくり戻していくと、6周弱、ほどけました。
スリップの具合は問題はないのかも。(経験がないので、ちょっとわかりませんが)

パワーリザーブを計算。
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基礎時計読本でも「忘れてはならない」という計算式
Z x V= z x v

写真で香箱車の歯を撮影し、数えます。歯は70本です。二番カナの歯は10本です。
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二番車は1時間で1回転ですから、回転速度が1/h

70×V=10 x1
  V=1/7

香箱車は1時間に1/7回転するということです。
つまり、1回転に7時間ということですね。

セイコーのゼンマイは、だいたい5.5回転ほどければヨシ、と言われているので、
5.5×7=38.5時間
パワーリザーブがあるということですね。
今回、巻いてみて6回弱ほどけたので、このくらいあるべき、というところはクリアされてるようです。

フタをあけるとずいぶんドロドロの真っ黒でした。
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取り出してベンジンで刷毛洗いします。
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さて、別の時計で、手でゼンマイを入れようとして、スリッピングアタッチメントを折ってしまい、ひどく苦しんだので、今回はこいつを使いました。
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明工舎のピスター
右巻き、左巻を切り替えられる、ベンリなヤツ。
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いらないゼンマイで何度か練習したのですが、、。
このダミー香箱芯にひっかけて、くるくる巻いていきます。
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問題は、この芯から外すときなんです、よく見えないから、感覚ではずすんですが、、、

これに失敗して、グチャーーー!!!!

ああ、オワタ、、、、、。
と思ったのですが、このためにゼンマイを捜し歩くのはイヤです。、
多少、ゼンマイの中央付近で折れ曲がったのですが、使えそうだったのでそのまま使うことにしました。

結局、今度は手で入れました笑
(ピスター、もっと練習が必要です)
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グリースは自動巻き用S-3を使用。本当は、セイコーのセルフグリーシングゼンマイ(油を差さなくても大丈夫!)っていうやつを使っているゼンマイ専用で、香箱の内壁だけに塗るやつです。
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でもコイツを壁にもゼンマイにも入れてやりました。

よく見ると、折れ曲がってしまった箇所がわかります。
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分解前と同じように巻いてみると、5.5周ほどけます。滑り出しのトルクはあまり感じません。少しすべるのが早いかと思って、今度はふたを外してやってみたところ、隙間から見る限り、ぎりぎり最後まで巻ききってから滑っているようですから、こんなもので妥協。
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またあけたりしたらゼンマイが切れるかもしれませんから。

ちなみに組み付けたあと、角穴車を巻ききって、パワリザを調べると、38時間ほどでした。計算どおりで、まあOKです、一度、三途の川を渡りかけたゼンマイなんだしね。

香箱のフタをして、洗浄したほかの部品とともに、組み立てますが、それは、また次回。

今日はこんなところで。