ワニ革の種類とその違い (カイマンはクロコダイルじゃないってば!)

時計ストラップのための、ワニ革研究を、素人なりにやっていきたいです。
もちろん、いろいろな所で紹介されていますが、重要なことを備忘録的にまとめました。
日本爬虫類皮革産業共同組合さんおよびガウディさんの情報をもとに、自分で調べたことも交えて。
 
 
●腹(肚)ワニと背ワニ
 ワニ革の使い方として、きれいな(竹斑の)腹の模様を活かすか、ゴツゴツデコボコした背中を活かすか、という選択です。時計ストラップなので、もちろん、腹ワニを選ぶところです。腹は「肚」というのが業界言葉。腹ワニを得るためには、背中で割って皮をはぎます(背割り)。逆に、背ワニなら腹割りです。背ワニは、ハンドバックなどでよく見かけます。

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●時計ストラップで使う部位
 主に腹を使うわけですが、そのすぐわきの脇腹(サイド)を使うこともあります。腹の四角い部分を竹斑(図左)、サイドの丸い部分を玉斑(丸斑)(図下)というわけです。そして、もっとゴツくてスゴイのを欲しければ、背中からサイドにかけての部分を使う人もいます(図上)。
 
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ちなみに、「フ」は腑、符、斑、などと言いますが、個人的には、言葉の意味から、マダラという意味の斑を好んでいます。やはり、竹斑が一番人気で高級とされていますが、玉斑もシブいですね。
 
●シャイニーとマット
 原皮が「革」になるまでには複雑な工程があります。その最後の過程で、マットにするか、シャイニー(グレージング)にするかの二つの選択肢があります。光沢のあるシャイニーにするには200kgもの力をかけてメノウ石で磨きます。メンズの時計で高級感があるのは、マットのほうが多いでしょうか。どちらも捨てがたい魅力があります
               マット
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シャイニー
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●ワニ革の種類
 ワニには、沢山の種類がいますが、皮革として流通しているのは主に、以下の6種類です。(カイマンは一種のみ取り上げています)

(1)スモールクロコ(イリエワニ)(学名Crocodylus porosus
鱗は他のワニと比べて小さめで、横の列の数が多いです(3135)一番評価の高いクロコだと思います。竹斑と玉斑が切り替わるとき、おおよそ竹斑一列に対して玉斑二列ぐらいになっています。
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(2)ラージクロコ(ニューギニアワニ)(Crocodylus novaeguineae
鱗が大きめで正方形に近く、横の列の数がやや少ないです(2432)。ラージ、スモールというのは個体の大きさでなく、鱗(斑)の大きさです。
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(3)ナイルクロコ(ナイルワニ)(Crocodylus niloticus
鱗は細かく、長方形になっています。鱗のサイズはスモールクロコとラージクロコの中間くらい。
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脇腹の部分が狭く、玉斑が、あまり丸くありません。すぐに背側になります。
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(4)シャムワニ(Crocodylus siamensis
スモールクロコよりもやや斑は大きめ。横の列は3034列くらい。
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(5)アリゲーターミシシッピーワニ)(Alligator mississippiensis
クロコダイルではありませんが、よく似ています。斑は長方形です。鱗の横列数は2934列くらい。
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※クロコダイルとアリゲーターのちがい
・クロコは、竹斑・玉斑をよく見ると、一つ一つに穿孔(ピット)が存在します。小さな穴で、ワニの感覚器官です。アリゲーターの腹にはありません。ヘビにも優れた感覚器官がアゴにありますが、爬虫類はごつごつしたウロコですが、温度や触覚をこうした特殊な器官で察知します。このピットの話などは次の機会に。
 
クロコ
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※注意が二つあります。穿孔は、加工の過程で非常に見にくくなることもあります。また、アゴの革にはアリゲーターにも穿孔が存在します。
 
・クロコは細長いアゴをしています。アゴを含んだ一枚革のときは参考になるかと思いますが、難しいかもしれません。
 
(6)カイマンワニ(カイマン)(Caiman crocodilus
これもクロコダイルではありませんが、クロコよりも安く手に入るので、よく見かけます。最大の違いは、腹の竹斑がゴツゴツと硬く、シワのようなぶつぶつがあります。
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カイマンはほとんどアゴか脇腹が使われます。そのため、カイマンワニ=玉斑のような言われ方をします(間違ってはいませんが)。竹斑に相当する部位はあるのですが、少なくとも時計のストラップには使えません。写真をみると良くわかるかと思います。
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カイマンは、その学名に「クロコディルス」が含まれることから、「カイマンクロコダイル」などと言ったりして、クロコの一種として売ろうとするのをよく見かけます。
 
●ジャクルシー(Dracaena guianensis
これは、トカゲですが、背側が少しワニに似ていてめずらしいので、好まれる革です。これを「ワニ」として売ろうとする人もいるようです。でも、今は輸入が禁止されているようなので、ワニよりかえって貴重か?
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●型押し(アリゲーターグレイン、クロコダイルグレイン)
一本だけ、型押しのワニのストラップを持っています。
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この趣味を始める前に寸短のベルトをオーダーしたことがあり、クロコが高いので、まあ、いいや、型押しで十分!と思ったのですが、こうして本物のクロコ(プロの作品)と並べると一目瞭然ですね。
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斑の隙間(シボ)の深さがありません。それに深さが均一です。もちろん穿孔も見当たりません。シボの部分を中心に折り曲げてみると良くわかると言いますが、そこまでしたことはありません。
最近は型押しもよくできているようなので、パっとつり革をつかんでいる腕の時計を見たくらいじゃわからないかも。そのうち、穿孔も開けた型押しができるかもしれませんね。でも、さすがにある程度ランダムに穿孔を位置させるのは難しいかも?
 
●間違い探し
カイマンをクロコとする表現や、アリゲーター・カイマン・クロコと竹斑・玉斑の問題をごちゃまぜにすると、いろんなところで誤解をまねく表現が出ています。ただのミスならいいですけど。
 
時計ストラップメーカーのカタログでの記載↓
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え、ようするに、カイマンだよね?↑
 
 
 
時計雑誌に出ていた記載↓
 
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穿孔はよく見えないけど、アリゲーターだろうがクロコだろうが、これは両方竹斑でしょう。
 
 
だいぶ長々と書いてしまいました。
 
詳しくは、日本爬虫類皮革産業共同組合さん、ガウディさんをご参照ください。
 
ガウディ店長のブログ、勉強になります。革の値段の高騰など、現場ならではの声が載っています。何しろ、この人の革ジャンはやばいです。
 
 
今日はこんなところで。
ワニ革について勉強したら、今後とも、ブログに書き残しておこうとおもいます。