ロレックスを選ぶ正直な理由

なぜ、ロレックスを選ぶのか、なぜ、丸の内の牙城におびえながらも畏敬の念を抱くのか。
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これは時計好きにとって大きな命題だと思うけど、私のごとき、ロレックスをまともに買ったことの無い人間が語るべきではなさそうです。

それは重々分かってるんですよ。ゴメンナサイね。

それでも、初心者・素人・庶民という立場で、じっくり考えてみたところ、ロレックスを選ぶのは「自信の無さのあらわれ」であるとの思いに至りました。

ロレックスの好きな点あるいはロレックスを選ぶ理由について、一般的と考えられる言葉を並べてみると、沢山あります。これらを、白い理由と黒いそれに2分してみました。クリーンとダーク、建前と本音、みたいな感じ。すべてじゃないけど、ほとんどのワードは、私、個人にとっても当てはまります。
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白い理由の一番手として、いわゆる、「カッコイイ」とか、それに付随するキーワードです。ロレックスの時計はかっこいいのです。それが、ファッションの分野と結びついて、アメカジにはエクワン、GMTペプシ、というのが定番なようです。このあたりも中古ロレックスの値段の押し上げに一役買っているのでしょうか。ファッション業界のことはよく知りませんが、みんなで、今年はブカブカの服を流行らせようとか、しめしを合わせて購買意欲を高めたりするわけですよね。しめしをあわせて値段を上げるのは時計屋さんと同じですね。とりあえず、ボロボロのロレックスが300万円とかで取引されるヴィンテージロレックスという分野は特殊すぎて、というか、金持ち道楽に過ぎるので今回の庶民目線のお話の中では取りあげません。
次に、ロレックスのステータス性というのは重要です。小物や服装で値踏みされたり仕事上ある程度のことが求められる人にとっては、ステータス製のあるモノというのは大事でしょう。普通の人から見れば、パテックよりリシャールミルより、断然ロレックスです。あとはオメガやフランクミュラーくらいしか思い浮かばないはず。必ずしも良い意味でのお金持ちアイコンではないけれど、相変わらず、認知度・ステータス性は高いです。「その男、グランドセイコー」といくら宣伝しても到底かなわないのです。

そして、購入するときに、影響を与える白い大きな理由の一つが、リセールバリューという言葉。世界的な状況を反映して、国内の業界でも値崩れしない状態が維持されているようです。時計に興味の無い人からすれば、そもそも、すでに売ることを考えるなよ、と思いますが、売り買いを繰り返すことが常識ということを刷り込まれていますから仕方ないです。だいぶ前ですが、Penの特集の中で、「機械式時計の10か条」みたいな特集がありました。第9条「1本の機械式時計を一生愛しぬく時代ではない」ですって。何百万もする時計を「一生モノ時計」と宣伝する人々のどの口が言うのか。10か条の中で、これを含めて、「リセールも意識していい」「正規店で買おう」、と、読者のためというより、業界のために3か条も使われているのよ。
かくいう私も、ずっと同じ時計でいられない人間ですし、ロレックスのリセールバリューに何度か助けられました。売却することを念頭にしていると、同じ価格帯でもカールFブフェラーを選べないのです。
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それから、そのほかの白い理由として、時計史における業績とか、特許とか、ブランドイメージというのがあります。確かに、ロレックスがすごかったらしいですが、我々にとってどうでもよいことばかりです。メルセデス・グライツ嬢とかエドモント・ヒラリー卿とか。でも薀蓄は楽しいんですよね。ミステリアスなメーカーっていうけど、ただの殿様商売、勝手なれんじゅう、というほうが適切な気がするのは私だけじゃないはず。でも、そういうわがままで勝手な女に夢中になるのは男の性かもしれません。
時計ジャーナリストとかの専門家もやっぱり太鼓判を押す!というのもどうでもいいですよね。仕事で言ってるんだしさ。

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それから、性能が良いとか、ムーブメントがウンヌンという理由もよく聞きます。性能が良いかといえば、所詮は機械式なので、防水がバッチリの電波時計にはぜったいかなわないのであります。まぁ、他の機械式に比べて、という意味かな。繊細なコンプリとかは別として、どれも同じようなもんだよなぁ、きっと。コスパを持ち出して性能ウンヌンと言えば、セイコーファイブが一番。でも、50年代のムーブメントが、素人がやってもしっかりと動いたというのは、すごいし、重厚なブリッジ、磨かれたアンクル、このあたりに感動する人もいるかもしれません。
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コダワリのある男はかっこいい。私はそう思ってます。根暗なオタクとは一線を画したオシャレなこだわり、というのが、さしずめロレックスフリークの言い分か。でも、本当にわけの分からない細部の点にこだわるのがツウだとされています。独特の言い回しや省略語があって、それを共有することで仲間意識・特別感は高まります。スティックとかマキシってなんだよ、と思います。でも、セイコーのマチックを全クリしたり、エニカとシーマのキャリバーをマスターしている人も、おなじコダワリですね。どちらもカッコイイですね。
シーンを選ばぬ万能さ、というのは、デイトジャストとかシンプルなオイスターについては、強く共感します。シンプルなデザインで、無骨でかっこいいけど、ドレッシーな要素もある。そして防水性も高い。自分も、どの時計にしようか迷ったとき、なんとなく手巻きオイスターには手が伸びます。革ベルトを合わせるときもいろんなものが似合いそうです。しかしながら、「どんなシーンにも、冠婚葬祭でもエクワンが万能!」という説には納得できません。ポップだし黒文字盤はクセがあるのではないでしょうか。

 これらの白い理由だけを総括して、ロレックスは「色々とバランスがいい」から選ぶ、というのは、着地点としては、悪くなさそうです。
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でも、どうだろう、もっと自分に正直に、もっと適切な表現はないでしょうか。

黒っぽい理由は、白い理由と表裏一体、というところもありますが、考えてみます。
まず、黒い理由のわかりやすいヤツ、ロレックスは見栄をはるための時計。それで今日の議論は終わりじゃないかと言う気もします。
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カッコイイというけれど、モテたい、というのが本音です。ファッションはモテたいからやるのだと信じてきました。でも、ロレックスでモテれば苦労しないよね。いや、そんなことみんな百も承知。ロレックスを買えるというのは、それだけカネを持っているという意味でモテるかもしれないのです。ステータス性というところとも重なりますね。でもロレックスが何十万もする時計であることを知る女史は多くないでしょう。いや、高級腕時計なんて、男女問わず世間のほとんどの人があまり興味がないのでは。

それから、高い時計を買うんだから、目立ちたい、威張りたい、見栄、という気持ちも沸いてきます。ただし、上述のとおり、ほとんどの人が興味ないから、イバるといっても、ごくわずかな趣味の仲間内でイバるというだけ。あるいは時計屋に行って店員にホメてもらう、という小さい話です。私個人としては、仕事上で見栄を張る必要はめったにないけれど、不動産屋やちょっといいレストランに行くときにロレックスを着用することが多いように思います。それは、ある程度、ロレでイバるというロジックが通じるところ、と無意識に思ってるんですかね。で、目立つとか見栄という観点では、やっぱりデイトナとかサブマリーナとかの、ある程度ハデなスポロレのほうが適切でしょう。
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「高級時計はスイス」というのは、デザインというより機械の性能という意味で昔から言われてきましたね。現在、ハデでファショナブルなロレと対照的な時計として、マジメな国産のグランドセイコーが比較されるのは自然です。最近はロレやスイス時計を意識したやたらな高級路線を目指していますが、一昔前のグランドセイコーとか、ザシチズンとかの国産の高級ラインは、値段を考えれば、当然に、すばらしい時計です。でも、時計業界にかぎらず、昔から染み付いている欧米コンプレックスやブランド信仰から、海外ブランドを選ぶのがヨシとされがちです。愛国心はあるけどグランドセイコーじゃなくてロレックスを買う。サッカーの日本代表は好きだけど、Jリーグはダメで、欧州リーグはいい。というのと似ています。電化製品は日本製がいいけど、ファッション系は欧米ブランドを選ぶ、という感じでしょうか。時計は大事なアクセサリーだけど、本来は電化製品と同じく、ただの実用品なんだよね。
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黒い理由の中で最も大きなウェイトを占めるのは、単純に「みんなと同じがいいから」ということです(※みんなと言っても「時計好きのみんな」。)ただ、あまり堂々と主張する理由になりづらい。これを隠すために白い理由を並べるのではないか。ロレックスが売れるのはバンドワゴンというのがピッタリなように感じます。みんなが買うから、われもわれも。だから、余計人気がでる。「とりあえず良くわからないから」、店員や雑誌も「やっぱりロレックス」って言ってるしなぁ。という気持ちが大きいです。あまり興味の無い人が結納返しでとりあえず有名なロレックス、というのはありそうな話です。私も興味の無いものであれば、とりあえず、名の知れたブランドで、という選択をすることがあります。そうではなくて、時計好きなんだけど、ロレックスが大好き!というのは、実は、積極的に選ぶというよりは、みんなと同じじゃないと不安でしょうがないから、というのが根底にあるのかもしれません。学生時代も、社会人になっても、どんなコミュニテイーでもまわりの目が気になって、空気を読むのが良いとされ、自己主張をして浮くのが怖い、その他大勢でいたい、普通でいたい、というような人は多いでしょう。私はそういうのを肯定したくないタイプですが、でも、そういう感情がいくらかあるのは確かです。
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一方で、時計好きでも、ロレックスは買わない人もいます。天邪鬼なアンチロレックスか、そうではなくて、自分のセンスに自信があって、自分の好みにロレックスが合わない、これこれこういう理由で、84万のGMTマスターじゃなくて114万のマネロを選ぶんだ!という人もいるはずです。富裕層がたまたまカールFヴッフェラーを買っちまう、というのでなく、普通の人が、一生懸命ためたお金で、違うものを選ぶ、ということを指しています。私のブログ友達で、けっこうなお値段で、無名のセイコーのダイバーのオマージュ時計を購入し、愛用していると聞いて、心に響いたのを覚えています。確固たる自分の美意識とかコダワリがあって選んだんだな、と。自分なら、同じ値段で買うならミーハーにサードダイバーだの植村モデルだのを選びそうなもんです。リセールバリューも無意識に考えてるのです。いや、飽きるのは仕方ないんですよ。リセールは意識していいのです、ハイ。
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いいかげん、長くなってきたのでおしまいにします。
いろんな理由があってロレックスを選ぶんだけど、心の底のほうにある感覚的な理由は「自信の無さ」なのかもしれません。
・自分の立場や雰囲気に自信が無いから見栄を張ろうとして、ロレックス。
・センスに自信が無いから、とりあえず無難なロレックス。
・飽きずに使える自信が無いから、リセールバリューのいいロレックス。
・業界の方針(?)に逆らう自信も無いから、ロレックス
 
最後に、そんな、自信のないロレックス好きが、現在、持ってるのはこの2本。
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地味だけど黒文字盤が魅力的なアンティークの手巻きオイスター ref.6426
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派手だけど不人気なスポロレ、ヨットマスター ミディアムサイズ ref.168623 
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GMTマスターを処分して、ヨットマスターを買い求めました。ボーイズサイズというのが決め手なのですが、それ以来、この一年弱、もうロレックスは欲しくなっていません。どちらも同じぐらいの頻度で使っています。
 
白と黒の両方の好きポイントがたくさん詰まった、大好きな2本です。
 
とりあえず、ロレックス好きが何らかの行動を起こすたびに、クォークやオノマックスが自動的に儲かるという基本をおさえながら、これからもロレックスを楽しみましょう。

今日はこんなところで。読んでくれてありがとうございました。