スピードキング Ref.4220
Cal.710 (10 1/2)
その2 分解・組立編
前回の続きです。
この手巻きムーブメントは、もともとは、径が10.5リーニュのものであったため、名前をそのまま、Cal.10 1/2と呼ばれていたものです。後に、Cal.710という現在のようなキャリバー番号が与えられました。この個体について、どちらなのかはわかりません。すくなくとも、710という刻印は無いです。
ロレックスが、1920年代に時計メーカーとして活躍を始めたころのムーブメントで、その後の色々なキャリバーのベースになっている機械と言えます。バブルバックのCal.A295も、スモセコ仕様のCal.700がベースになっています。
なんだか、機留めネジがはずれなかったので、分解の時はしばらくケースに入ったままです。ちなみに、このムーブメントは、テンシンの耐震装置がありません。
こないだ紹介したように、これも出車式の中三針です。秒カナをおさえるバネは、ブリッジのネジの一本と一体型です。先日のブローバの10AKと比べて、ガッチリしています。
角穴車をはずすと、しっかりしたコハゼバネが見えます。
こうやって見ても、1945年ものにしては、綺麗です。大事にされていたのでしょうし、裏蓋をみて何度かメンテされた記録があります。なにより堅牢なオイスターケースが劣化から守ってくれていたのでしょう。
香箱受です。丸穴車を外したところです。とてもしっかりしたブリッジで、ロレックスの本気っぷりが感じられます。ここに限らず、パーツがガッチリしていて、はめたときのグラツキもありません。
ブリッジのネジの長さが違う↑
さて、ここへきて、ようやく本気でケースから出す努力をしました機留のネジ(青焼き)を外すことができました。
遅ればせながらムーブ台へ。
文字盤を外すため、ワキのネジを緩めます。
裏返すとこのようになっています。見えているのが三番車
四番とガンギ車をはずしたところです。そういえば、テンプを外すのを忘れていました。
テンワは、このように、幅の違う部分が交互に現れる面白い形です。チラネジの一部は調整用なようです。今回、なにもいじりません。こわしたら大変なので。
石に汚れも少ないため、テンプは分解しませんでした。よく洗浄します。
受石への注油は、テンワをちょっと持ち上げて、そっと斜めの隙間からやる反則技でやりました。
あとは、二番車とアンクルだけです。
表へ行きます・
ロゴやマーク、目盛の緻密な書かれっぷりと、夜光のボロくささが、リダンではなくオリジナルを思わせます。
文字盤の裏にはROLEX
針と文字盤は汚さないように別の場所で保管します。
日の裏側です。SIZE10 1/2と刻印があります。その下はシリアルナンバーでしょうか。4桁の数字がありました。
パーツの縁は面取りされていて重厚です。
カンヌキオサエのぽっきんもありません。
最後に、ツツカナを外してオシマイです。
香箱内は年代なりに汚いですが、今回はゼンマイを出さずに、よく洗うことにしました。リスクを考えて。。。蓋と香箱真だけはとりだします。
もちろんスリッピングアタッチメントはありません。外周の縁にヒッカカリがあるのが良く見えます↑
ここから、組み立てです。
洗浄後です。とうぜん、ゼンマイのスキマは洗えていませんが、少しはきれいになったと思われます。この後、いつも通りメービスのグリスを注油します。
まずは、巻真の周りを組みます。
そういえば、これも、小鉄車の表裏が逆に組まれていたので、
正しく入れなおしました。キズミで見るぐらいでは、差が良くわからないのです。
表へ行きます。
残念ながら、輪列を乗せた写真が残っていません。輪列受もガッチリとしています。
出車をつけたままなので、三番のホゾへの注油は、隙間からやります。
これでだいたいOK。あとはテンプを入れるだけ。
片振りはありますが、振り角が良く出ていて、歩度も安定していました
テンプに片振り修正装置はありませんので、このままでヨシとしました。
あとは裏面を組んで、
針を刺したら、完成です!
リューズの内側と、裏蓋には新しいパッキングを入れて、グリスを塗ります。
裏蓋のコマはこのサイズです。28.30
れいのベルジョンの装置で閉めるのですが、、ラグ幅17ミリの白いコマでやろうかなと固定してみたところ、オープナーのコマが、白いコマに接触して使えないことが判明。
やっぱり、ロレックス用にかった、四本足のバイスを利用することにしました。
これでめでたく完成です。
一部、完全にばらさずハショったところがありますが、破損してしまった時のパーツ集めの大変さを考えた末の、リスクマネジメント、、
なんて言い訳であって、ただの技術不足ですね。
ま、ともかく、分解前よりは、状態としてはマシになったんじゃないかと、思うことにしています。
この時計で、初めてロレックスをやりました。勉強になりました。
古いものですが、同時代の国産に比べれば、かなりしっかりしていて、精度も良く出るし、今も問題なく実用できる、というのが凄いです。
この顔つきとサイズ感がまた魅力です。
今日は、こんなところで。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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