テンテケチャンチャン、チキチキチャンチャン
ええ、本日はブログにお越しくださりありがとうございます。私は、年間の行事らしいことには、あまり縁がないのですが、いわゆる年越し蕎麦というやつを食べに、自宅から電車にのって一時間半かけて蕎麦屋を訪れることは欠かしません。
ところで、こちらは、クロノスか何かの特集でまた取り上げられていた菊野氏。
恥ずかしながら、最近まで江戸の刻(とき)についてよく知りませんでした。今日は蕎麦屋でそんな話を。
隠居さん:いやぁ、ドラさん、助かったよ、大掃除の手伝いをしてくれて。しかし、どういう風の吹き回しだい、おまえさんからわざわざ忙しいこの時期に。
ドラのび太:ご隠居さんにはいつもお世話になってますから当たり前のことで、ってえのに加えて、ちょっとまぁカカアのやつが例によって師走のイライラでねぇ、ボーナス額が低いだぁ、忘年会だの時計だのと金ばっかりつかって、今日もまた変なダンボールが届いた、とか、なんとかうるせぇので、居心地悪いもんで、、
隠:今年は、お前さんも無理していろいろ時計を買ったみたいだからねぇ。
ド:そうなんすよ。それに、大掃除で余計に機嫌が悪くて、アンタなんて、じゃまで役に立たないなら、だんなのところの手伝いでもしてきなさいってね。そうすりゃ、家もすっきりするし、だんなだって夕食くらいご馳走してくれるだろうから、一石二鳥だって、、、あ、しまった。
隠:ん?なんだって、そういうことか。ははは、まぁ、あたしだってそう思ったところさ。ただでこんなに手伝ってもらうわけにもいかないよ。年越しそばって言うくらいだ、これから蕎麦屋に行こうじゃないか。
ド:ほう、さすがよさそうな店ですなぁ。更科系ってやつですか。そばのヨシアシはってなぁどこで判断するんですかね。
隠:まぁ、私の好みで言えばね、しゃきしゃきっとコシがあって、それをどっしりと受け止めるカツブシをしっかり使ったツユだね、それが大事。それに、そば粉を何割使っているかだな、十割ならいいってもんでもない。昔から、二八そばというくらいで、、
ド:そうそう、蕎麦といやぁこないだ、寄席ぇ行って、時そばってのを聞いてきたんですよ。二八の16文で食べれたとか、二八はそば粉の割合だとも言われてるらしいっすね。
隠:ほう、よく知ってるじゃないか。なるほど、寄席へ行くのも教養が身につくってことだね。
ド:今日も渋い時計をされていますね。あれ、両腕に!!
ド:うーん、あんまし有名じゃないですよね、、、?シンプルで何の変哲もないような、、?
隠:そうだね、マニアックなものだね。どちらも、70年代の機械式の末期に作られてたものさ。セイコーのはシャリオといってね、二針のシンプルなドレスウォッチ。シチズンはアドレックスと言って、これは普通のだが、スペシャルのやつはすごいんだよ、ガワに貴重な素材が使われていて、リューズで緩急計をいじることもできるんだそうだ。
おっとのびないうちいにいただきましょう。
ド:ゾゾゾーー。ズルズル。さすが、隠居さんのごひいきの店だ。食わせますねぇ!いや、それでね、どうにもわからないんですよ。
隠:何がだい?
ド:いえ、時そばの噺ですよ。最初に、そば代を一文チョロまかしたやつは、蕎麦屋をベタ褒めしてから、御代を払うときに、一文ずつ渡して、ひぃふういつ、むう、なな、やぁ、と来て、今なんどきだい?と聞きますよね?それで蕎麦屋がえぇ、九つでございます。10、11、12、、、16、と。
隠:ああ。
ド:それをまねした馬鹿なヤツが、今なんどきだい、と聞いて、「へぇ、4つでございます」と返されて、5つから数えなおすっていうオチですよね。
隠:そうさ。
ド:でも、やっこさん、真似してみたくて、イソイソと早めに繰り出したんだろうけど、なんだって、五時間も早く出発しちまったんですか?
隠:、、、、、ドラさん、あんた、落語を聞こうって人はまず、江戸時代の時刻くらい知っておいたほうがいいね。「九つ」の一つ前が「四つ」なんだよ。
ド:え??
隠:江戸時代はねぇ、今みたいに1~12時という表示じゃなくて、ね、うし、とら、、と干支で表したんだよ。
ド:へぇ、それはなんとなく知ってたんですが。
隠:ほら、時計の文字盤を「干支」って言うじゃないか。今で言う夜中の12時に子(ね)をおいて、そこから12干支を時計回りに並べたわけ。それぞれを一刻いっときと呼んだわけだ。
しかも、その一時をさらに四等分していて、「子の一つ」などと呼んだわけだ。真夜中に、草木も眠る丑三つ時、なんていうだろう?だいたい夜中の二時ごろが丑だからね。
ド:なるほど。じゃあ、ときそばに出てくる九つとか四つていうのは?
隠:昔は時刻って言うのは、鐘で知らせていたからね、金の打つ数を聞いて時間を知ったわけさ。だから干支だけじゃなくて、数字も使ったわけ。ちょうど明け方と夕暮れをどちらとも、6つとしているんだな、明けむつ、暮れむつと。
ド:ほうほう
隠:で、それを反時計回りに七つ、八つ、九つ、と。そうすると、ちょうど、真夜中に真夜九つ、のいっとき前が、夜の四つ、というわけ。
ド:なーるほど!だから、失敗したやっこさんは、九つの一とき前の、四つにやっちまった、というわけですね。五時間じゃなくて、一刻だけ前なわけだ。しかし、なんでそんな順番なんですかねぇ。
隠:中国から来ているらしい。九というのが重要な意味があるから、それを12時位置の子にあてはめて、、それを時計回りのいっときに、二倍、三倍、と当てはめると、9、18、27、36、45、54、。これを鐘の音で鳴らすのは多すぎるから、一の位だけ採用して9、8、7、6、5、4、となった。それで、また六時位置に九つをもってきて、9、8、7、6、5,4となるのだそうだ。
ド:なるほどねぇ~~、勉強になりますなぁ。
隠:詳しくはWEBで(ここの画像を借りました)
ド:あっしも、ヤフオクばっかり見ていないでもう少し勉強しないといかんですねぇ。
隠:ドラさん、ちなみに、この江戸の時刻の表し方は、不定時法というんだよ。聴いたことあるだろう。暮れと明け方を6つというルールだと、季節によって変わるだろう、だから、秋から冬は、夜のほうが,いっときの実時間が長くなるわけだ
ド:ほう、それが不定時法ですか。そうするとあっしたちも、秋からは労働時間が減って、夜ゆっくりできるってもんですな!昔の人はよかったなぁ
隠:日が昇って働いて沈んだら終わる、っていうことだね。今より、自然現象に従った暮らしだったわけさ。「秋の夜長」なんていう意味がわかるってもんだね。
ド:とうぜん、夜にじっくり趣味の時間があったわけだ、いいですなあ、
隠:まぁ、、そんなに江戸時代の人の暮らしがのんきだったとは思えないがね。ドラさん。しかし、すごいのは、この不定時法を実際に現在の腕時計によみがえったということだよ。
ド:ほう!
隠:こんなかんじに、干支表示にする時計はこれまでにも出ていたけど。
独立時計師の菊野氏は、これを腕時計で作っちまったわけだ!季節によってこうやって、夜の時間と昼の時間が動くって寸法だ。こりゃあ驚いたもんだよ。
ド:すごいですな~~菊野氏は最近、何かと話題になりましたが、いや、ほんとうにすごいですな!これは!!トュールビヨンだのより、あっしら日本人ならこれがほしいですね。
隠:そうだなぁ、ぜひどっかの時計メーカーに量産してほしいものだね。
ド:いや~腹いっぱいです。ご馳走様でした。こんなにうまいソバをゴチになったうえに、いろいろ教えてもらってありがとうございます。しかし、今日の二つの時計の魅力ってのは何でしょうね。
見た目は何の変哲がない時計でも、ムーブメントがすごいということですか。なるほど、江戸っ子の粋ってやつですな。見えないところで格好つける、という!
隠:いいセンいってるけどね、ちょっと違う。こいつらは、確かにいいムーブメントだ、シャリオはcal.2220、アドレックスはcal.8050どちらもハイビートだ。8振動なんだよ。
ド:ハイビートはガンギ車の歯が多いから、フタをあけたときにかっこいいですよね。精度もいいですね。
隠:そして、今日の食事にはぴったりなわけだ。
ド:?その心は?
隠:2つの時計、二つとも8振動、二八16の「16振動蕎麦」ってわけさ
ド:(ズコッ)
おあとがよろしいようで。
読んでくれてありがとうございました。
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